山川登美子辞世の句歌碑


   薄倖の歌人山川 登美子のことなど

 

 私が教鞭を執っている公立若狭高等看護学院近くの

 

小浜市千種一丁目(旧遠敷郡竹原村)に

 

平成十九年四月、「山川登美子記念館」が開館された。

 

これは、登美子の生家を記念館にあてたもので、

 

山川家は、代々小浜藩主であった酒井家の側用人御目付役として仕えた

 

由緒ある家柄であり、登美子の父禎蔵も藩の要職を務め、

 

維新後は、第二十五国立銀行の頭取を勤めた人物である。

 

その山川家の四女として、登美子は明治十二年(1879)七月十九日に生を享け、

 

僅か二十九歳の若さでこの生家の奥座敷で亡くなっている。

 

生家は、禎蔵が建てたもので、母屋の他、離れ、土蔵、表門、中門などが

 

国の登録有形文化財となっている。

 

登美子は地元の高等小学校を卒業した後、

 

大阪の梅花女学校に進み十八歳で卒業している。

 

元々は、画家を志していたようであるが、

 

二十一歳の折に梅花女学校の研究生になり、

 

大阪に出たのを機に、この年の八月に、

 

東京新詩社の社主を勤め機関誌『明星』を主宰していた与謝野鉄幹と出会うことになる。

 

同席していた鳳志よう(後の与謝野晶子)とも同時に出会う。

 

創刊されて間の無い『明星』第二号に、登美子の短歌が掲載されたのをきっかけに

 

東京新詩社の社友になったからである。

 

これは後に、妻子ある鉄幹と晶子との間で四角関係を繰り広げることになる。

 

 鉄幹は始め、兄の運営する徳山女学校の教員になるが、

 

十七歳の折に四歳年上の教え子と関係を持ち(最初の妻・浅田信子)、

 

同時に複数の教え子達(二番目の妻・林滝野など)とも関係を持つなど

 

女癖の良くない男であった。だが、純粋無垢な登美子は、

 

手もなくそんな鉄幹に惹かれていく。鉄幹は登美子を「白百合の君」と呼び、

 

登美子がその頃詠んだ短歌には、

 

「あたらしくひらきましたる歌の道に君が名よびて死なんとぞ思ふ」

 

「君が手にふれにし日より胸の緒の小琴のしらべたゞにいわれぬ」とあり、

 

恋心は燃え上がっていくのであるが、世間に逆らってまで

 

妻子のある鉄幹と添い遂げる所までは行くことが出来なかった。

 

それは、士族特有の厳格な家柄に生まれ、絵に描いたような封建的な父親に、

 

当然その恋は阻まれ、晶子に鉄幹を譲るがごとく親の勧める縁談を承諾し、

 

翌年結婚する(「それとなく紅き花みな友にゆずりそむきて泣きて忘れ草つむ」)。

 

全てに自由奔放な晶子に比べ、芯は強いものの、控えめで常識的であった登美子は、

 

画筆も歌筆も自ら折って嫁いでいく

 

(「画筆うばひ歌筆折らせ子の幸と親御のなさけ嗚呼あなかしこ」

 

「わが息を芙蓉の風にたとえますな十三絃をひと息に切る」)。

 

しかし、夫の山川駐七郎は翌年結核で死去し、さらに長兄、長姉に続いて、

 

父のみならず養女にしようと決めていた姪もこの世を去り、

 

自身も夫から感染した結核菌が元で日本女子大学を中退せざるをえなくなり

 

(「今の我に世なく神なくほとけなし運命するどき斧ふるひ来よ」)、

 

結婚から七年後には登美子も生家でひっそりと息を引き取っている。

 

短命であり、歌集も『恋衣』一冊が残るだけなので、

 

晶子に比べるとその知名度は圧倒的に低いのであるが、

 

登美子の歌には自由奔放な晶子とは対極にある静謐なまでの美しさと勁さが、

 

そこに一際鮮やかな光芒を放ち、今なお光り輝いているといえよう。

 

                                           国立舞鶴高専人文科学科 名誉教授

                                                                                                     文学博士 村上 美登志

        

 

 

 井上耕養庵

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